山下佳恵詩集『あなたへ』


ミミズの死


タイル張りの道の上で
ミミズが一匹 死んでいる
体全体ひからびて
地面にべったりはりついて
通行人は踏まないようによけて通る
きっとミミズは
目の見えない体をひきずって
必死に戻れる土を捜したのだろうか
道の上には一滴の水もない
あるのは 照り返しの暑さだけ
ミミズが一匹 死んでいる
足元の世界で繰り返される悲劇を
私達は知ろうともしない


「 ミミズの死 」( 了 )

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