山下佳恵詩集『あなたへ』


思い出になってしまったあなたへ


信号は青だった
渡っていた横断歩道
宙を舞った体
奪われた命
止まってしまった あなたの時

今は天国にいますか?
それとも まだこの世をさまよって
泣いているお母さんを心配していますか?

あなたが亡くなってから出てきた何枚かの写真
まるで 忘れないで とでも言うかのように出てきた写真
綿あめをおいしそうにほおばっている写真
プールに行って笑っている写真
笑いあって ほお寄せあった写真
幸せそうに ほほえむ 写真の中のあなた
その時を 確かに過ごした 写真の中のあなた

お母さんと話したよ あなたの遺影の前で
泣きながら 話したよ あなたのことを ふたりで
思い出になってしまった あなたを思うと
涙がでるよ 
お母さんの涙
お母さんの思い
伝わっている事を願うよ
あなたは
いい子だったんだね
いい子が天国に早く行ってしまうのなら
いい子じゃなければよかった と泣くお母さん
そんなお母さんをみたら
きっと心配しているよね 優しかったあなただから

今はもう話せない
今はもう笑いあうことができない
思い出になってしまった あなたへ
忘れないよ
忘れないよ 決して
あの頃のあなたの思い出を心に抱いて
今を生きるよ
明日を迎えられなかったあなたの代わりに
明日をあなたに 伝えられるように


「 思い出になってしまったあなたへ 」( 了 )

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