山下佳恵詩集『あなたへ』


ゆきが舞い降りたなら


ねえ
知っている?
雪って本当は透明で
エッジで光が拡散しているから
白く見えているんだって
雪は雨粒からできるんじゃなくて
氷でできているんだって
だから透明なんだね
それでも空から舞い降りてくる雪は白にしか見えないから
光は全体に拡散しているんだね
そして
一つとして同じ形がないのなら
できるだけたくさんの雪を見ようよ
すぐ消えてしまう
はかない命だから

ねえ
思うんだよね
人の幸(ゆき)も透明で
一瞬 一瞬にきらめいて
色々な色に変わって輝くって
人の輝きは
心全体に
体全体に輝くんだって
悲しい時は悲しい色に
楽しい時は楽しい色に
そして
一つとして同じものがないのなら
できるだけたくさんの幸を見ようよ
すぐ消えてしまうかもしれない
はかない命だから

ねえ
すぐとけてしまう
はかない雪の命だけど
雪が空から舞い降りてくると
掌に受けとめたくなるように
幸も掌に受けとめて
空を見上げようよ
すぐとけてしまうはかないゆきを
できるだけ
たくさん
受けとめよう
ひらひら
舞い降りてくるから
ひらひら
舞い降りてくるゆきの中にいて
空を見上げようよ


「 ゆきが舞い降りたなら 」( 了 )

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