山下佳恵詩集『あなたへ』


宵待ち草


あんなに賑わっていた海の
人影も少なくなり
あたりがオレンジ色に染まる頃
その色を吸って咲くかのように
開く花

九十九里の浜辺のピンクのハマヒルガオの天の川が
次々と輝きを消そうとする頃
月の光に導かれるように
開く花

潮風に揺られ
暮れゆくあたりを照らすように
つぎつぎと黄色の灯りをともすように開いていく

九十九里の海岸がピンクの天の川から
黄色の天の川へ変わる時
夜空の星と話をしよう
空の星へ届くよう

宵待ち草の黄色い花が開くとき
月の光も瞬いて
海の光も煌めいて
咲かせる
一夜の灯の花


「 宵待ち草 」( 了 )

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