山下佳恵詩集『あなたへ』


野菜の話


気がつくと私はエリートだった
色、形、長さとも申しぶんなく
美しい姿が自慢だった

私から見える他のものは
くの字に曲がっていたり
とても短かったり
不細工なものが多かった
私は自分と見比べて あざけり笑った

ビニール袋の中に入った私が見たのは
色も形も長さもみんな同じくらいの仲間だった
私はたくさんの中の一人にすぎなかったことを思った
いま、スーパーの店頭に並べられ
仲間が次々と買われていく
売れ残っていく私は
からだがどんどんくずれていくのを感じた
エリートだと思っていた私は
ただの落ちこぼれになった


「 野菜の話 」( 了 )

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