山下佳恵詩集『あなたへ』


電線のお客様


地上と空との中間で
地面に平行な電線の上には
今日も色々なお客様がいます

見上げると
ハクビシンの親子が
その電線を歩きます
細い電線のその上を
バランスとって歩きます

見上げると
カラスが三羽止まっています
二羽は寄りそい
一羽は離れて
何を語らい
何を思うのでしょう

見上げると
ツバメがたくさん止まっています
こんどはいつ帰ろうか
みんなでそろって帰ろうね

見上げると
鳩が一羽
体を丸めて止まっています
これから降る雨を思うように

見上げると
風になびく
電線だけ
風だけがその電線に止まることなく過ぎていきます


「 電線のお客様 」( 了 )

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