山下佳恵詩集『あなたへ』


風が通るとき


湿った鋼色の砂の上を
乾いた乳白色の砂が時折煌めいて
地面を這うように流れていく
さらさら
 さらさら
波が浜に打ち寄せ
砂を呑みこもうとするけれど
砂は交わることなく流れていく
さらさら
 さらさら
  さらさら
乳白色の砂は流れる
海に注がない
川のように

風が通るとき
どんなものが
その前方に置かれてあろうとも
風は
何もためらうことなく
ただ
ただ
ただ
通りすぎていく


「 風が通るとき 」( 了 )

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