山下佳恵詩集『あなたへ』


月の物語


新月 三日月 上弦の月
満月 下弦の月 新月

月の満ち欠けは繰り返す
人の知らない古代から
そして人が知らないだろう未来まで

月の物語も繰り返す
たくさんの願いとともに
私の知らない古代から
そして私が知らないだろう未来まで

薄墨色に染まった空に
体を輝かしながら昇ってくる半月
膨らんでくる体に
希望を
夢を抱き
地上を窺いながら
空に矢を射るようにして西の空に沈む
時間に追われ真夜中十二時を門限のように
空の階段をかけぬけるシンデレラ 上弦の月

真昼に浮かぶ白い半月
細っていく体に
希望を
夢を託し
空を仰ぎながら
地上に矢を射るようにして西の空に沈む
そしらぬ顔して真夜中十二時過ぎに
昇ってくる下弦の月

黒い満月に願いをかけ
光り輝く満月に希望を託し
始まり終わり
終わるようで続く
果てなく続く月の物語



「 月の物語 」( 了 )

TOPページへ

「新しい詩」
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Yoshie Yamashita All rights reserved.
inserted by FC2 system