山下佳恵詩集『あなたへ』


頂上めざせ


わっせ わっせ 頂上めざせ
脇目もふらず より道もせず
ひたすらめざせ 頂上を

のども渇いて
足も疲れて
苦しいばかりで進まない
遠くに見える頂上は
きっと素敵なところでしょう
心に描き
夢見て進め
ひたすらめざせ 頂上を

やっと頂上だと思ったら
そこは荒涼別世界
見渡す限りのパノラマの
美しい景色はどこだろう?
強い風に
黒い雲
小さく育った草ばかり

来た道が間違っていたかもと気がついて
引き返そうにも日は落ちて
あたりは暗くなるばかり
戻ろうとしても戻れない
進もうとしても進めない
いったいここはどこだろう?

明るくなってわかったことは
いまいるところが頂上で
心描いた美しい景色は夢でしかなかったこと
山の天気はころころ変わり
大きく広がる青い空
吹き抜けていく風、風、風
足元に蕾をもった小さな花

わっせ わっせ 頂上めざせ
夢見た世界を探すため
ひたすらめざす 頂上を



「 頂上めざせ 」( 了 )

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