山下佳恵詩集『あなたへ』


ヘクソカズラ


いつのまにか生えてきて
地面を這うように伸びる茎
こちらの方には花が咲きません
他のものに絡みつけて伸びていく茎
こちらの方にたくさんの小さな可憐な花が咲き
道行く人の目を引きます

花は小さな白い花
その中心は紅紫
可憐なかわいいこの花に
つけられた名前は ヘクソカズラ
屁とつけられるだけでもかわいそうに思えるのに
糞までついた ひどい名前

どこにでも生えてしまって
引っこ抜こうとしてみると
そのときに広がる悪臭に
その名前がついたことを
思い知ることができるのです

つけられた名前の汚名をはらすため
どこまでも どこへでも這っていき
どこまでも どこへでも絡みつく
咲かせてみせます 白い花
結んでみせます 黄金色の実
そして
解いてみせます 私の誤解 



「 ヘクソカズラ 」( 了 )

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