山下佳恵詩集『あなたへ』


ゆびきりげんまん


約束したよ
小指と小指をからませて
ゆびきりげんまん
約束したことは守るのが当たり前って思っていた

お母さんと子どもの約束
友達と友達の約束
恋人と恋人の約束

約束を守らなかったら
針を千本のまされる
ゆびきりは小指を切断
げんまんは げんこつを一万回
必ず守るという約束の証

人々の前で約束する公約
マニュフェストとカタカナに変換され
いとも簡単に破られる
信じては破られ
破られては幻滅し
またか と小さくなっていく希望
絵にかいた餅は餅のまま
飾られるだけで手に取ることも出来ない

 世の中を正しくして
 経済などが緩やかに流れるようにするのが政治

うそついたら
はり せんぼん の〜ますっ

破っても実行されない罰
約束なんて破るためにあるんでしょ

ゆびきりげんまんも
あまりしなくなった子どもたちが
コンピュータにフラグをたてる
ひとときのぬくもりの不確かな約束より
ぬくもりはないけれど確かにある約束の印

ゆびきったぁ
つながっていた小指さえ断ち切って
自由になった約束の文字



「 ゆびきりげんまん 」( 了 )

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