まだ誰も歩いていない
砂のさざ波のうえを
あなたと二人歩いた
風がつくった波の模様
砂のさざ波がどこまでもひろがっている
ひとつぶ ひとつぶの砂は
長い歳月を記憶したタイムカプセル
雨風にさらされ
くだかれ けずられた記憶を
閉じ込めてねむっている
風は 砂を
呼び覚まして運び
砂の川をつくる
歩いてきた道をふりかえると
くっきりつけたはずの足跡は
流れてくる砂の川に
埋もれて覆われてしまう
風は吹く
風は
どんなものが前方に待っていようとも
吹き抜けていく
砂は
風の通った記憶を確かに記していく