しかくい空間
鍵のつけられた扉
私はここで何匹の子を見送っただろう
かわいい顔 小さな体
すんだ瞳
かぼそい声でなく子たち
あの子が欲しい と
両親に訴えていた子どもがいた
女の人や男の人が
私の前で立ち止まり
なかにいる子を出してもらって抱いていた
そう いつかこの空間から
温かな部屋のなかに連れていってくれることを
どの子もみんな待っている
売れ残って体が大きくなってしまった子の前は
素通りにされることが多くなった
部屋の隅でじっとうずくまっていたあの子は
どこに行ってしまったのだろう
優しい人に買われていったと思ったのに
おしっこをするなんてしらなかった
吼えるなんて思わなかった と
文句を言ってくる人もいた
生きている動物であることは
十分わかっているはずなのに
無理な繁殖ばかりさせて
毛が抜けて 体は痩せ細り
悲惨な姿になっても
生きていかなくてはならない子たちもいるという
この子たちが生まれてきたのは
商品になるためにではなく
玩具になるためにでもなく
道具になるためにでもない
飼えなくなって捨てられて
灰になるために生まれてきたのでは
絶対にない
また新しい子が入ってきた
かわいい子だね
優しい人のもとで
安心して暮らせるといいね
しあわせな一生であるように
ここで私は見守るしかないけれど
願っている