山下佳恵詩集『あなたへ』


まっ黒い画用紙


先生が配った 一枚の
まっ黒い画用紙
そこにお花の絵をかきなさい という

昼間咲く花なら知っている
ぼくは 夜咲く花は知らない

まっ青なバラの花をかいた
ぼくのかいたバラの花は病気のバラみたいだ

白い色の画用紙なら
ぬけるような青空だって
茜色にそまる夕焼けだって なれるけれど

黒い画用紙にはどの色を塗っても黒い影が表れてしまう

闇のなかに閉ざされてしまうような黒い画用紙
先生はなんの花をかけ といいたいのだろう

ぼくたちの未来は
黒い世界のなかで咲く花のようだ

先生 ぼくは
青空のしたで咲く花を
かきたかった



「 まっ黒い画用紙 」( 了 )

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