山下佳恵詩集『あなたへ』


青いみかんと運動会


青いみかんをみると思い出す
子どものころの運動会

秋のひざしを受ける白いテント
ほのかに香るキンモクセイ
校庭に引かれた白いライン

楽しみだったお昼休みのお弁当
おいなりさんに唐揚げに
デザートには小さな青いみかん
家族みんなで囲んで食べたお弁当

応援団の三三七拍子
たすきがけした長いはちまきがひるがえる
砂ぼこり舞いあがる騎馬戦
渾身の力でひっぱる綱引き
リレーは最後の花形
バトンミスがないように
バトンを落とさないように
ころばないように
全力で走る
走る

あのころは ただ
全力で走っていた

青いみかんに人差し指をいれると
ぷしゅっとはじける青い匂い
心のなかにひろがる
あまずっぱい思い出



「 青いみかんと運動会 」( 了 )

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