山下佳恵詩集『あなたへ』


夏がいく


空には
いつのまにか いわし雲
ススキの穂が顔をだして
少し涼しくなった風に挨拶をする

西の空を美しく染めていた夕焼けが
あっという間に夜に追われて
あたりが暗くなりはじめると
ふっと切なくなってくる

夏の終わりは なぜか さびしい
大切ななにかをどこかに
落としてきてしまったように

 楽しいときはすぐ過ぎていく
 過ぎてしまえば短くて

鳴きはじめた虫の声
ゆく夏を
惜しむように 蝉がなく



「 夏がいく 」( 了 )

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