山下佳恵詩集『あなたへ』


イトスギの葉の流れる川


青く見える芝生のうえで
白から黒に変わるリバースに興じる人々と
ふくらませすぎた風船を放りなげて
どこで破裂するのかを
おしつけあって戯れている
年をとりすぎた子どもたちがいる

青空に暗黒の雲が
いつのまにかしのびよって
雨を降らせ 川をつくって流していく
川の流れは動き出してしまったら止まらない
時代の流れも動き出してしまったら止まらない
過去の過ちの流れをどうしてまたつくりだして
たどろうとしてしまうのか

 ヒトヲコロシタラ サツジンニナルノニ
 クニノメイレイナラ ユルサレルノ?
 ホウハ
 ホウハ ナンノタメニ ツクラレルノ?
 ダレノタメニツクラレルノ?

どこからか運ばれてきたイトスギの葉
濁流にもまれながら流されていく
イトスギの葉の流れる川を
どう変えていけるのか
岸辺は
川底が大きくえぐられて
上部が川に沈むのを
いまか いまか と待たれている



「 イトスギの葉の流れる川 」( 了 )

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