山下佳恵詩集『あなたへ』


うしろのしょうめん だあれ


かごめ かごめ
子どもたちの遊び場だった空き地もいまは
立ち入り禁止の立て札とテープに囲まれている
小学校と公園の間にあった空き地に
黒い要塞のような家が建ったかと思うと
家のなかから鬼のような形相のおじさんが出てきて
公園で遊んでいる子たちを捕えて怒り出す

 ここで遊ぶんじゃない
   どうして公園で遊んじゃいけないの?
 遊んでいる声が煩いんだよ
   大きな声なんて出していないよ・・・

おじさんのクレームはどんどんエスカレート
学校の子どもの声も騒音だと騒ぎ出す

 学校の放送の声が煩い
 チャイムの音が煩い
 運動会なんてもってのほか
 子どもなんて建物のなかに閉じ込めておきなさい

二重サッシに防音壁

かごのなかのとりは
 いつ いつでやる

建物のなかで一日中騒がないように言われ
勉強やパソコン ゲームやスマホばかりやっていたら

つるとかめがすべった

密着しすぎた都会で
自分だけの権利を主張し
未来への希望の種を育てようとしない世の中で
なにが育っていくのだろう
子どもらしい子どもが疎まれる社会で
その時期に通らなくてはいけない成長への過程を
体験せずに育ってしまった子どもの未来は
どう変わっていくのだろう

その子たちも成長して大人になる

うしろのしょうめん だあれ




「 うしろのしょうめん だあれ 」( 了 )

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