山下佳恵詩集『あなたへ』


不安な座標軸


何気なくみたショーウインドウに
うつっていた自分のすがた
のばし放題の髪に化粧っけのない顔
まるまった背中によれよれの服

結婚して子どもが生まれ
がむしゃらに過ごしてきた毎日
自分のことはすべて後回しにして

公園デビュー 幼稚園 小学校
子ども中心の生活
仕事をしたくても
思うようにできないジレンマを抱え 社会と遮断されて
ひとりだけ
置いていかれるような不安を抱いて

夢もあった
  資格を取って一生できる仕事をして
希望もあった
  育児も家事も仕事もそつなくこなし
理想もあった
  明るく温かい家庭を築いて

いま 私は
人生の座標軸のどのあたりにいるの?
これからの私はどこに向かおうとしているの?

私の姿のうしろを
綺麗にお化粧しておしゃれをしたママたちが
ベビーカーを押しながら通りすぎていく




「 不安な座標軸 」( 了 )

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