山下佳恵詩集『あなたへ』


白浜のアリ地獄


海岸の白い砂浜
昼間は白砂が焼けて
灼熱地獄のように熱い
民家の軒下に巣をつくったのなら
雨風も避けられただろうに
なぜここに巣をつくらなくてはならなかったのか
ここはアリ地獄にとってもアリ地獄
白砂は底なし沼のよう
わたしを奥底に沈めて
這い上がれなくするかもしれない
蟻もダンゴムシもほとんどいないこの白浜
獲物が通るのを
じっと
じっと ただ 待つだけ

     耐えて

   耐えて

 耐えて

夢見る

ウスバカゲロウとなって
空を舞う日を
広くて青い海を
いつか見る日を



「 白浜のアリ地獄 」( 了 )

TOPページへ

「新しい詩」
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Yoshie Yamashita All rights reserved.
inserted by FC2 system