山下佳恵詩集『あなたへ』


ワンオペの迷育


いつからだろう
全部一人でやらなくてはならなくなったのは
理想は
支えあって話しあえる家族
現実は
仕事に追われ
時間に追われ
会話さえもままならない

男は仕事という夫に
家事も子育ても自分の仕事も全部
一人だけで背負わなくてはいけなくなった

どうすることもできなくて頼んだことすら
当たり前のように忘れられて
口論することも馬鹿馬鹿しい
言いたいことを押し殺して
最初からいないものだと諦めたら楽になった

イクメンとは無縁のワンオペ育児
一人だけに負担が重くのしかかる
イクメンに光が当たれば当たるほど
よその芝生が青く見え
闇に追いやられるワンオペ
孤独感と閉塞感にさいなまれる

頑張っても
頑張っても
壁は高く
迷宮に迷いこんだように出口が見えない

 一億総活躍社会っていったって
 給与の手取りは減るばかり
 子どもの経費は増すばかり
 がんじがらめで足かせをはめられているみたい

この声にならない声を
訊いて
叫びにならない叫びを
聴いて




「 ワンオペの迷育 」( 了 )

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