山下佳恵詩集『あなたへ』


木のなげき


時代の流れというものは
どういうものなのでしょうか
私はもう何年も同じ場所に立ちこの場所から
多くの事をただみているだけですが
ここ数年とても流れが速いように感じます

長い冬があけると
待ってましたとばかりに
白い花を咲かせます
満開の花に道ゆく人も私をみて
きれいね と言ってくれるのです
風に舞う花びらも
うす緑の新緑も美しいものです
夏に毛虫が多いのは私の弱点です
秋に私の衣は赤や黄色に染まり
散りゆく命を輝かせますが
散った衣がコンクリートの上をはい
ゴミになるばかりになりました
家人は葉を拾い集め
隣人に申し訳ないから  と
私の手足を多く切り落しました
自然のサイクルが崩れると
誰かが犠牲になることを
私は自分で知ったのです


「 木のなげき 」( 了 )

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