山下佳恵詩集『あなたへ』


ねずみとねこ


雨あがりの日曜
自転車で出かける午後
ここは高円寺と中野の境
目の前を横切る小さなねずみ
それをねらう 猫がつけていく
古い家が壊されそこを追われたねずみ
猫が来るなよという目線をおくる
一瞬のすきをついてとびかかる猫
背中をおさえられたねずみが
一声ないたかと思うと
猫にかみついた
窮鼠猫をかむ
ねずみの気に負けた猫が
一目散にかけて逃げていく
後に残ったねずみは
何事もなかったように歩いていった
ねずみが一匹
都会の路地に
消えていく


「 ねずみとねこ 」( 了 )

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