山下佳恵詩集『あなたへ』


 祈り


いま テレビで娘と同じ年頃の子が
うすい布一枚まとって
寒さに耐え飢えに耐えている
いつ攻撃されるか分からない状況の中で
彼女の大きな瞳は
現実をそのまま見つめている

そのテレビを見ながら
暖かい部屋で
なかなか食事が終わらない娘にいらいらする母
ねぇ
いま このとき
着るものもなく
食べるものもなく
明日生きていられるか分からない人たちが
いることを知っている?
むかし戦争があった
生きていくだけに懸命だったときがあった
五十年の歳月は流れ
物が余り飽食の時代に生まれ育つ子どもたち

人は愚かな事だと反省しながら
戦争を繰り返してきた
まだ流れる赤い血
地球上のどこかで いまもなお

変わっていく時代の中で
およそ二千年前
不動の位置についただろう北極星
この地球のことをずっと見てきた
一万二千年後その北の位置が
こと座のベガに移るだろうとき
この地球はどのように見えるだろう

ねぇ
平和といわれる  いま
私たちも戦争のなかを生きている
さまざまなストレス
複雑にからみあう人間関係
学校や社会の〈 いじめ 〉
精神の戦争のなかを生きている


やめないあらそい
仕方のない現実
いま テレビで見たあの子の大きな瞳
側にいる子どもの瞳
世界中の子どもたちの瞳が
希望に輝く瞳になればいい
明るい笑顔がみられればいい
平和で安心して暮らせる地球になるために
現状にあきらめずに流されずに
祈りたい


「 祈り 」( 了 )

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