山下佳恵詩集『あなたへ』


一匹のねずみ


霧雨のなか
痩せこけた小さなねずみが一匹
ヨタヨタと道を横切っていく
すぐ側に人間がいるのに気がついているのか
いないのか
気にすることなんか全然出来ないくらい
歩くことだけで精一杯
この飽食の日本で
ねずみ一匹が食べていくぐらい
いくらでもあるだろうに
痩せこけたねずみは ただ一匹
人間など頼りにするものか とばかりに
歩いていく


「 一匹のねずみ 」( 了 )

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